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MLR SPECIAL INTERVIEW  スペシャルインタビュー
MOTHER LAKE RALLY 主催者/冒険家
風間 深志
旅情を誘う琵琶湖の魅力
本当は「しじみラリー」という
名前にしたかったんです
「MOTHER LAKE RALLY」は二輪冒険家、風間深志による突然の閃きから始まりました。しかし、参加者1万人を超える「SSTR」をはじめ、これまで大小様々なバイクイベントを主催、プロデュースしてきた風間深志にとっても女性向け、それも「走る」ことを目的としたツーリングラリーイベントは例のない試みでした。着想に至った経緯やそのコンセプト、琵琶湖や女性ライダーなどついて語ります。

女性ライダーが主役になれる時代の到来
 

 僕が主催している「SSTR」というツーリングラリーは、おかげさまで1万人以上のライダーが参加する日本屈指の人気イベントに成長しました。でも女性ライダーの比率は全体の10パーセントぐらいなんです。まあ分母が多いのでそれでも1000人以上もいる計算になりますが、会場を見回してもやっぱり絶対的に少ない印象です。だけど、SSTRに参加してくれた女性ライダーに話を聞くと、皆さん口を揃えて「もっと女性ライダーが増えて欲しい」とおっしゃるんです。

日本のバイクシーンって基本的に男性目線で作られたものしかないと思うんですね。最初から女性に最適化されたカルチャーはほとんど存在しない。その辺りは欧米のバイクシーンの方がもう少し進んでいるのではないかと思います。

そもそも日本のバイクカルチャーは、ロードレースなどのモータースポーツの発展を基盤に本格化したという経緯がありますからね。スピードやタイムで優劣をつける価値観は女性の感性とは遠いものだろうし、なかなか普及しないのも無理はないんです。

だけど昨今のバイクシーンはツーリング、すなわち「旅」が主流となり、女性がすごく参入しやすくなったと思う。というのも、まあこれは僕の個人的な印象でしかないんですけど、男性よりも女性の方がおしなべて旅を楽しむことに秀でていると感じるんです。
そういう意味では、そろそろ機は熟したなと。日本のバイクシーンにも女性ライダーが自立して楽しむコンテンツが必要なんじゃないかと思ったんです。それで昨年初めて開催したのが、このMOTHER LAKE RALLYでした。


 

MOTHER LAKE RALLYの別名は「しじみラリー」
 

 舞台を琵琶湖にしたのは、日本を旅する面白さが凝縮された場所だと思ったからです。

琵琶湖は日本一大きな湖であると同時に、長い歴史の中で育まれた固有の生態系が今も息づいています。それだけでも代わるもののない偉大な存在ですが、実際に訪れてみても美しく、旅情を掻き立てる様々な文化的要素もあるんですね。「琵琶湖周航の歌」ではないけれど。
 

どうせ開催するなら全国から女性ライダーが集まるようなものにしたい。それには琵琶湖がふさわしい場所だと思ったんです。地理的にも文化的にも、ある意味では日本の中心ですからね。周囲に高い山がないし、気候も温暖だから誰でも気負わずに参加できるだろうと。ぜひ多くの女性ライダーに琵琶湖の美しい景観とスケールの大きさを感じてもらい、良い旅をしてもらいたいですね。
 

前述した「SSTR」というイベントを発展させていく中で分かったことですが、ただライダーが集まるだけでは、本当に魅力的なバイクイベントとはいえないと思うんです。参加ライダーに楽しんでもらうのはもちろんですが、地域に暮らす人々も訪れたライダーを歓迎してくれるようなイベントが僕の理想です。

 

MOTHER LAKE RALLYが女性ライダーの自立と共に「琵琶湖の水辺の環境改善」も大きなテーマとして掲げているのには、そういった考えがあるからです。
 

じつは琵琶湖の固有種はどんどん減っているんです。地元の方に話を聞くと、昔は琵琶湖でセタシジミが沢山採れたというんです。地域の子どもの頃は外で遊んだついでにそれを採って持ち帰り、夕飯のお味噌汁に入れて食べていたと。本当に豊かな湖だったんだろうなと思いますね。じつはこの話を聞いたとき、MOTHER LAKE RALLYの別名として「しじみラリー」というのも閃いたんですよ(笑)何となく響きがキャッチーだし、中々良いと思いませんか?

何にしても僕らがバイクで旅をすることのモチベーションって、訪れた土地の美しい自然を見て触れて感動するための行為に他ならないわけです。だから琵琶湖が美しくあることはバイクで旅をすることの面白さと直結しているんです。本イベントでは、エントリー費の一部を琵琶湖の水辺の環境改善のために寄付しますが、そういう行為を通じて地域の人々に歓迎されるイベントに発展できたら素晴らしいと思っています。
 

昨年の会場で圧倒された女性のパワー
 

 僕は約50年間も二輪業界に携わっているんですけど、女性に特化したイベントってこれまで手掛けたことがなかったんです。昨年初めて開催してみて、女性ライダーのエネルギーに驚きました。参加人数は約170名しかいないんだけど、会場全体が他のバイクイベントを圧倒する、ものすごい熱気とパワーで満たされていたんです。参加ライダーの誰もが心の底からイベントを楽しんでいるのが伝わってくるんです。女性ライダー同士で集うとこんなにもハイテンションな場になるのかとショックを受けたほどです。

あと、主催者として本当に恥ずべきことなんだけど、昨年はイベントで使用するアプリにトラブルが発生してしまったんですよ。それも参加者からめちゃくちゃに叱られてもしょうがないような深刻なものだったんです。
これはもう覚悟を決めないとな……なんて恐る恐る会場のライダーに話しかけると、皆さん「楽しかったら全然気にしてないです」とすごく寛大に対応してくれ、すごくありがたかった。これが男性ライダーだったら相当なお叱りの言葉をもらっていたと思います。


で、僕はこの女性ライダーの寛大さはどこから来るものなんだろうと考えたんです。勝手な推察にすぎないんだけど、男性の多くが、業績や売り上げや利益といった数値的あるいは機械的に評価される社会で生きていることと関係があるような気がしますね。だから男性は他人に対してもそういうミスは許せなくなるんじゃないかと。これは自戒を込めて言いますけど(笑)
 

女性はその辺りがすごくニュートラルというか、物事を総合的に捉えて良いものは良いと評価できる特性があるような気がします。結果的に楽しめたなら、アプリにトラブルがあっても気にしないというようなね。もちろん、アプリのトラブルは絶対にあってはいけないので、今年は万全を期しています。


今年も美しい琵琶湖で女性ライダーの皆さんと出会い、そのエネルギーに圧倒されたいと思っています。ラリーと名付けていますが、大きなバイクでも小さなバイクでも、ベテランでもビギナーでも気軽に参加できる旅の提案です。ぜひご参加ください!

​昨年のMOTHER LAKE RALLYでの様子。心の底から楽しんでいる女性ライダーの姿に風間自身も大きな元気をもらったという。

PROFILE

 

風間 深志(かざま・しんじ)

1980年にアフリカ大陸の最高峰、キリマンジャロをオートバイで登ったことを皮切りに二輪冒険家として数々の冒険に挑戦。82年に日本人ライダー初のパリ・ダカ出場と完走を果たし、87年に北極点、92年に南極点にそれぞれ到達した。2013年より、自身発案によるツーリング・ラリーイベント「SSTR」を毎年開催。現在では1万人以上が参加する本邦屈指の人気を誇る二輪イベントに成長した。昨年より、日本初(?)の女性向けツーリングラリー「MOTHER LAKE RALLY」も主催。1950年山梨県山梨市生まれ。

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